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横山光輝先生のダークな短編集―『闇の顔』。

闇の顔 (講談社漫画文庫 よ 1-89)闇の顔 (講談社漫画文庫 よ 1-89)
(2008/02/08)
横山 光輝

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先日、中野で見つけた一冊。
横山光輝先生の短編集です。
表紙と説明文からホラー系かと思いましたが、
実際はバイオレンス色の強い作品集となっておりました。

以下感想です。
作品のネタバレが含まれていますので、未読の方は注意してください。


・闇の顔
主人公・江崎猛は政治家の汚職を調べていた刑事の兄を殺され、
自身もその政治家の部下によって、生きたまま墓穴に閉じ込められる。
白骨死体が転がり、ウジ虫がひしめく墓穴の中から、
猛はなんとか脱出するが、その時の体験で髪は白くなり、精神にも支障をきたす。
兄と自分の幸せな生活を踏みにじられた怒りに燃える猛はやがて復讐鬼となり、
政治家の屋敷に忍びこみ、じっくりと復讐を実行していく…。


とにかく主人公・猛がすさまじい作品。
最初はいかにも横光主人公といった男前なんですが、
墓穴から出てからは、
白髪頭で眉毛は全て落ち、目は大きく見開かれ…と化け物と呼べるような顔つきになり、
おまけに脱出後から少しの間は気がふれていました
そう、何を隠そう表紙にデカデカと映っている、気持ち悪いE.Tみたいなのが猛くんです
しかしこれのお陰で、彼は非常にキャラが立っているんですよね。
『親族を殺され、自身も殺されかけた男の復讐譚』というと良くある話ですが、
「殺されかける→復讐を誓う」の間に、
『白骨死体の転がる墓穴に閉じ込められる』という展開があるため、
ただの復讐譚ではなく、壮絶な復讐譚になっています。
実際この墓の中の描写は相当気持ち悪く、
これだけの仕打ちをされたら復讐鬼となるのも分かります。
作中で政治家の部下に命乞いをされる場面もあるんですが、
猛はそんなものに一切耳を貸さず、復讐を行っていきますからね。そりゃあ恨みますよ。

まあ、『演劇学校に通っていた』という設定だけで、
なんでルパンも顔負けの変装術が使えるのかは疑問なんですが、
それも彼の深い復讐心によって成せる技と考えれば納得できない事はありません。
最後のアオリ文(おそらく雑誌掲載時のままのもの)の、
「若い生命をこの復讐にもやしつくして、猛は姿を消した!」という一文も実にすさまじいです。

・黄金墓場
「黄金の墓場」という言葉を残し死んだ漂流者。
その息子と宝探しを頼む女社長、
そして宝を自分たちだけで独占しようとする3人の荒くれ船乗りたちが宝を求めて出航する。
しかし宝に欲がくらんだ船乗りたちは、次第にその本性を表しだすのだった…。


謀略渦巻く海洋サスペンス。
主人公は遭難者の息子なんですが、彼はあまりキャラが立っておらず、
主に船乗り3人組が大暴れをする話となっています。
主人公及び女社長と船乗りは表向きは協力者ですが、
船乗りは宝を独占しようと、無線士と女社長のボディーガードを暗殺。
主人公は宝の地図を暗記していたため利用価値があるとされ、難を逃れますが、
それでも用がすんだら彼らに殺される危険はある訳です。
とはいえ、3人とも流石に船乗りとしての腕は良く、
嵐にあった時は彼らの判断で無事に事態を切り抜けています。
特に海ぼうずの働きは人間離れしており、
「嵐の中、綱の切れた潜水球と自分を鎖で縛って繋ぎ、マストに数時間しがみつき続ける」というのはすごすぎます。
その潜水球、多分数百キロはあるだろうに…。
この辺の、完全に敵とも味方とも言えない力関係は面白いところです。
その船乗り3人も完全に一蓮托生という訳では無く、
半ば強引に仲間に引き込まれた早耳の伝吉は、
事が済んだら自分も他2人に殺されるであろう事を察して、なんとか出し抜こうとしようとする…と、
展開がスピーディーすぎてイマイチ堪能できませんでしたが、このドロドロした人間関係はスリリングです。

しかし、なんで一介の船乗りに「早耳の伝吉」とか「ナイフの辰」とか二つ名がついてるんしょうね
(まあかの『デビルマン』にも「木刀政」「チェーン万次郎」とかあだ名ついてる不良がいましたけど…。)

・偽りの偶像(チャンピオン)
キックボクシングの選手である田湖原健児は、
会長に目をかけられ、一気にスター選手として躍進していく。
遂にはチャンピオンを下し、新たな日本チャンピオンとなるが、
次第に増長し、陰から見守っていた恋人とも別れてしまう。
そんな折、会長から「今売りだし中の選手に負けてくれ」と打診され、
自分の大躍進も作られたものだったと知らされる。
自分の実力を信じ、八百長話を断った健児だったが…。


業界の闇に切りこんでいった社会派の作品…でいいのでしょうか。
正直、一番スッキリしないお話ですね。
まあチャンピオンになったあとの主人公は割とはっきり調子に乗っているので、
無様な敗北で物語が終わる事に「ざまあ」と思わなくも無いんですが、
じゃあチャンピオンになった後も真面目に練習して、
性格の良い恋人と仲良くしていれば別の結果になったのかと言えば、そういう問題でも無いんですよね。
結局主人公はどうする事も出来ずに、業界の話題つくりの駒にされただけというお話になります。
ぶっちゃけ、タイトルでネタバレしていますね。

作中なんか良いキャラをしていたのが主人公のマネージャーで、
立場上、健児のスター街道が作られていたものだとは知っていたはずですが、
それでも健児の恋人との仲を心配したり、
新しくできた恋人を「彼女は君が好きなんじゃない。強い男が好きなだけだ」と警告したりと、中々良い人です。
彼が近くチャンピオンの座から転落する事を知っており、
その後、失意の彼を支えてくれる恋人について考えていた…のだとしたら、
このマネージャーも自分の立場に責任を感じていたのかもしれませんね。

まあ、ジム内でタバコのポイ捨てするのはどうかと思いますが。

・ぶっそうな奴ら
天才ドライバーの山崎五郎は、ある日謎の男女に分け前一億という仕事を誘われる。
同じように狙撃と金庫破りの名人が集められ、ついにその計画が明らかになる。
彼らは、5億円現金輸送車強奪を計画していたのだ。
綿密な計画のもとに作戦は実行されたが…。


横光先生版ルパン3世みたいな漫画。
かなりダーティーでアダルトな雰囲気の作品です(横光漫画にしては珍しく、シャワーシーン・ベッドシーンが目立ちます)が、
どうにもケレン味が不足していて、はっきりいって地味です
主人公ポジションの五郎の役割は、「強奪した輸送車をトラックに積んで運転する」だけですし、
アクシデントも「雨のための崖崩れで山道が塞がってしまう」と、これまた地味。
金庫破りの名人の小助なんて、活躍の機会すら無いし…。
あといかにも悪女の紅一点・マリも、
サービスカットが多いので騙されますが、実は警備会社の人をおびき寄せる位の事しかしていません。
致命的なミスにはならなかったものの、銃を突きつけるの失敗してるし。
とにかくページ数の割に地味な作品です。

・偏愛
老婆かねは、息子の家を訪れてた村で、
かつて仕えていたお屋敷のお嬢様と再会する。
「そのお嬢様の周りでは、何人もの男が変死している」という事実に怯えるかねは、
お嬢様の夫である博士を気にかけ、彼女の家を訪れるが…。


短いお話ですが、個人的にはお気に入りの作品です。
ラストのどんでんがえしは、そこまで意外という訳ではないですが、
他の作品で「金(と名声)に目がくらんだ人」が多く出ているので、
この作中の「生命保険」のミスリードにもあっさり乗せられてしまいました。
そしてこの犯人の表情が実に怖い。
真相を知って読み返すと、すごく意味深な顔に見えます。



個人的なお気に入り具合は、
闇の顔>偏愛>>黄金墓場>>>>偽りの偶像>ぶっそうな奴ら  という感じです。 
時代もありますし、
横山先生の漫画はあんまりブッ飛んだ展開は無いので、人によっては退屈に感じるかもしれませんが、
表題作『闇の顔』はかなりオススメです。
これだけ鬼気迫る壮絶な復讐劇は今の漫画でもあまりないんじゃないでしょうか。

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2011-09-26 20:07 : レトロ漫画 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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Author:ノノック
文章の苦手な文系。
ゆとり直前世代のゆるゲーマー。
ほのぼの漫画が好き。
2016年2月ブログ名変更。

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