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格ゲーコミカライズの傑作!『龍虎の拳2』(天獅子悦也)は今一度評価されるべき。


当ブログでも何かにつけてちょこちょこ書いていますが、
私の幼少の頃、KOFの一作目が出た1994年辺りには、
格闘ゲーム黄金期というのが確かにありました。
平成生まれの方には信じられないかもしれませんが、
その頃はデパートでも町の小さなおもちゃ屋でも、
文具店やお菓子屋の片隅でも、どこでもゲームの筺体が置いてあったのです。
ゲーセンにすら格ゲー筺体が無いこともある昨今では、
その頃の盛り上がりを想像するのは難しいのではないでしょうか。

さて、それだけ話題ともなれば、
当然のように漫画業界もコミカライズに乗り出します。
まあ格ゲーのコミカライズというと…かのボンボン餓狼みたいな例もいくつかありますが、
ごく一部には、
原作の設定に忠実に、むしろ物語を深く掘り下げ、何より真っ当に面白く漫画化した作品もあるのです。

龍虎の拳2 (2) (ゲーメストコミックス)龍虎の拳2 (2) (ゲーメストコミックス)
(1995/07)
天獅子 悦也

商品詳細を見る


この天獅子悦也先生の手がけた『龍虎の拳2』は、まさにそんな作品です。
ちなみに掲載誌はあの『ゲーメスト』(コミックゲーメストではありません。)で、
編集長の石井ぜんじ氏がストーリー協力していたりします。


この漫画でまず素晴らしいのが、扱いの悪いキャラがいないという事です。
格ゲーのコミカライズでは実に珍しい事に、
出番が無かったりゴミのように瞬殺されたりするキャラが居ないのです。
例えば、
第一戦で極限流道場に赴き、成り行きでユリと戦うことになるテムジンは、
ユリを女子供と油断し負けてしまうのですが、
その後、捨身でギースを倒そうと奔走するタクマに対して、
体を張って押し留め、ユリと共に説得…と、ただのやられ役では終わらない見せ場があります。
敢えて言えば、
出番がリョウとの一戦だけのジャックはちょっと割食ってる感じですが、
それでも結構良い勝負をして、覇王翔吼拳まで使わせたのですから、彼にしては良い活躍でしょう。
(例外として、藤堂竜白は、
 如月影二の「予選で戦った相手」として、1ページの瞬殺やられ役になっていますが、
 彼は元々2で出番が無かった人ですから、これでも良い待遇でしょう。失踪前の貴重な映像です。)

また、無茶な設定改変が一切無いというのも素晴らしい所でしょうか。
リョウたち極限流空手の面々が開催者の思惑で強制的に参加させられていたり、
ジョンやパイロンが表立って大会に参加していなかったりと、
ちょこちょこ原作との違いはありますが、
作品の雰囲気が壊れるような事は無く、むしろこれでストーリーが深まっています。
主催者ギースの思惑や、リョウやロバートの葛藤、
ガクスウとタクマの友情など、戦闘シーン以外にも見どころは多くなっています。
改変と言えば、
パイロンの鉄爪が、
この漫画では『目的のためなら凶器をも使う影二との非公式の場での戦い』という状況で使われるのも良い描写だと思います。
ゲームだとまあなんとなく受け入れてますけど、
流石に格闘大会で鉄爪なんて出したら、漫画的には違和感アリアリですからね。

もちろんバトルシーンのクオリティが低い訳ではありません。
一つ一つの対戦はそれほど長くはありませんが、非常に格好良いです。
作中で勝負を決めるのは多くが各キャラの必殺技ですが、
むしろそれを決めるまでの細かい技の応酬こそが、この漫画の見どころかと思えます。
ジャックの力任せの攻撃に、ミッキーのボクシング、ジョン・クローリーのCQB。
各々の格闘スタイルが実に「らしく」、
これらの熾烈な攻め、そしてそれに対しての受け・捌く動きがしっかりと描かれています。
巻末に描かれた付録ページでも、
実在の格闘技や選手と比較し、
各キャラの格闘スタイルについて詳しく設定・考察されており、
荒唐無稽がお約束のはずの格闘ゲームで、
漫画にも「気」「飛び道具」が普通に出てくるにも関わらず、ある種のリアリティすら感じられます。

そしてまた、作中に出てくる台詞が逐一格好良いのです。
「運命とはなユリ…自分に課せられた十字架の重さのことだ!」(キング)
「野良犬と生粋の軍用犬の戦闘能力の違いを教えてやる!」(ジョン・クローリー)
「天才には全てを所有する権利があることを証明してやる!」(ギース)

個人的に戦闘中に出るこういう台詞も好きですが、敢えて一番好きなものを挙げるとすれば…。

「長い間修行を研鑚してもなお師父を超えられなかった理由を今日悟りましたよ」
「私には宿敵(ライバル)がいなかったことです 武道家としては一生の不覚でした」
(リー・パイロン)

これです。
パイロンの師父ガクスウは、タクマとかつてライバルであり、共に龍虎と称されました。
パイロンはその二人が昔を懐かしむように語り合う姿を見て、この台詞を言います。
ガクスウとタクマの友情を讃えるようなニュアンスも含みつつ、
良い好敵手に巡り合わなかった己の不運を呪っているようでもあり…実に渋い。
このパイロンの武道家としての悲哀や、
タクマの「私は格闘家としてしか生きられない」という台詞、
最後にリョウの言う、「武道はゲームと違って終わりはない…闘い続ける限り未来がある」という台詞。
この辺りは「武道家」というものについて考えさせられます。
夢枕獏先生の『餓狼伝』『獅子の門』なんかにも通じる世界ですね。

とにもかくにも完成度の高いこの作品。
今や新声社も無く、改めて手に入れるのは難しいかもしれませんが、
格闘ゲームのコミカライズとしてこれほどの良作は滅多にありませんので、どこかで復刊して欲しいものです。
天獅子先生は『龍虎の拳1』『外伝』のコミカライズもしているらしいので、そちらも読んでみたいのですが…。
しかも外伝はカーマンが主役とか…渋い!

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2011-10-12 01:08 : 漫画 : コメント : 4 : トラックバック : 0 :
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非公開コメント

今回の記事に触発されて、私も手持ちの龍虎シリーズを読み返してみました。

1で通用した技も、2では効果がなくなっている、というのも面白いですね。
2011-10-14 09:52 : よっくん URL : 編集
Re: タイトルなし
>>よっくんさん
正直「誰が分かるんだこの漫画」と思って書いたレビューだったんで、
お持ちの方で当ブログ見ている方がいらっしゃるとは…。
1は持ってないんで、なんとか手に入れたい所です。

>1で通用した技も、2では効果がなくなっている
やっぱりどんな武術でも知られれば研究されて対策されるって事なんでしょうね。
技が知れ渡るのを防ぐには、対戦相手を殺さなくちゃならなくなりますので…。
この辺も『餓狼伝』とかに通じるテーマですね。
単に格闘ゲームのコミカライズに収まらない魅力のある漫画だと思います。
2011-10-14 23:30 : ノノック URL : 編集
だから児童漫画は……なんていいたくないけど
天獅子先生版龍虎はリアルタイム連載時には
あんまし重要的に読んでいなかったんですがなるほど、斯様に良質な作品だったんですか……
でも、そういう作品ですらも発表場所のせいで細井雄二版餓狼伝説やゴッセージ版龍虎の拳みたいなのより
知名度や普及度の点で今一つっぽいのは、何ともやりきれないですね。
相変わらずメジャーどころの企画&編集サイドの面々の、人材および扱うコンテンツの
選定&発掘センスはどうなってんだと言いたい。折角のメジャー舞台なのに何でこの人やあの題材を
平然とスルーしちゃってんだよ、って。

とりあえず天獅子先生には外伝以降丸投げになってしまった龍虎世界に対する一つの区切りを
独自にで構わないから付けて頂きたかったと、今更ながらに。KOFでの龍虎のことは忘れるんだw
2013-11-17 21:56 : 流浪牙 URL : 編集
Re: だから児童漫画は……なんていいたくないけど
>>流浪牙さん
ゲームのコミカライズなんてのはどうしたって賞味期限のあるジャンルなんで、
ぶっ飛んだ所がネタになるボンボン餓狼みたいな作品の方が話題になるのはしょうがない所だと思います。
格ゲーの真っ当に面白いコミカライズだと、
中平先生のストリートファイターシリーズが、ゲームへ設定逆輸入された作品ですが、
あれもたびたび話題になるのは「確かみてみろ!」というやらかした誤植ですし…。
まして龍虎はゲーム自体がシリーズが3作で終了してしまいましたから、認知度低いのもしょうがない…かもしれません。
コミックの出来はすごい良いんで、どっかで再販されませんかね。

そういえば天獅子先生はコミックゲーメストで餓狼伝説3のコミカライズもやってませんでしたっけ。
あれは最後にテリーがギースの霊(?)を消滅させて終了、みたいな終わり方だった記憶があるんで、
あれで龍虎時代から続くギースの因縁は終わり、という事かもしれないですね。
2013-11-17 23:15 : ノノック URL : 編集
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Author:ノノック
文章の苦手な文系。
ゆとり直前世代のゆるゲーマー。
ほのぼの漫画が好き。
2016年2月ブログ名変更。

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