「ウニバーサル・スタジオ」読んだ。
ウニバーサル・スタジオ (ハヤカワ文庫JA) (2007/08) 北野 勇作 商品詳細を見る |
独特の話の展開センスを持つ北野勇作先生のSF小説。
内容は、物凄く簡単に言ってしまえば『大阪を舞台にしたテーマパークに関する話』です。
まあ単に「話」とくくってしまっても、中で語られるのは、各アトラクションの案内の話だったり、従業員の裏話だったり、恐ろしい噂話だったり、夢のあるSF話だったりします。
特定の主人公はおらず、とにかくテーマパーク『ウニバーサル・スタジオ』に関するお話がまとめられています。
様々な大阪名物―食いだおれ人形とか、阪神タイガースとか、道頓堀とか、そこに沈んだカーネル・サンダースとか、グリコとか―を無理やりにSFや怪談や伝承やらに絡ませるセンスが素晴らしいです。
こちらのサイトなどが、試みとしては近いでしょうか。
以下にちょっとしたネタバレを含みます。
読んでて一番笑ったのは、「東京ネズミランドから侵入したスパイ」の話。
一緒に忍び込んだ生意気な口をきくアヒルの壮絶な死に様は必見です。
あと、「グリコーゲンで作られた巨人」の話も凄く良かった。
簡単にこの小説の凄さが分かる話なんで、ここで抜粋します。
びりびりと世界が震えた。
世界はきわめてたよりなく、薄っぺらなものにしか見えなかった。そんな世界へ、巨人は自らの意志で一歩を踏み出そうとしている。それは人類にとって、神の一歩なのか、悪魔の一歩なのか。
ところが―。
巨人は踏み出さなかった。そのまま地面に両手をついて、四つんばいになった。
(中略)
巨人は三日三晩もがき苦しみ、そこらのものを手当たり次第に破壊しながら、結局、四日目の朝、死んだ。
カニによる食あたりだった。
そんなわけで、巨人が死んだその地点は、今では「食いだおれ」と呼ばれている。
(中略)
残されたのは、苦しみと不安と恐怖で髪の毛を針の様に逆立てた頭だけ。
道頓堀に捨てられた使い道のないその頭は、やがて海へとたどり着き、大きなウニになった。
それが、この世界の始まりである。
(P186L1~P187L6 一部抜粋)
この面白さを上手く表現できないのが、とても悔しいのですが、この話、何故か無性にワクワクするんですよね。
単にグリコがモチーフのバカ話で終わるかと思わせて、
「食いだおれ」でまさか地名と絡んで、読者を驚かせます。
そして最後に「この世界のはじまりである」ですからね!!
国生み神話を思わせるスケールの大きさを見せてくれます。
(本筋とは関係ないですけど、「かめくん」といい、これといい、
何故か北野先生の小説だと、主人公側が敵を喰うシーンが出てきますね。
かめくんのアレはちょっとエヴァのオマージュかな?と思ったんですが…。)
あとは「地獄百八景」も好き。落語仕立てな話ですが、
そこから北野先生得意の「世界というモノの曖昧さ」に話が及ぶのが凄い。
何にせよ、ページ数は250ページ程で、文章も軽いため、おやつ感覚で読めるのですが、
かなり味付けは濃い、中々堪能できる小説だと思いますよ。
ただ、設定的にもっとページを割いて欲しくなるような話もいくつかあるので、ちょっと読んでて勿体ないと思う事がありますね…・。ちょっとそこは残念かなあ。
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