『グラップラー刃牙』バランスのいい山本選手について再評価したい。

 
『グラップラー刃牙』という格闘漫画について、今更細かい解説はいらないでしょう。
しかしその漫画に登場した、「山本稔」という闘士について、
名前を聞いてその姿が思い浮かぶ人はそれほど多くないと思います。
むしろ、「バランスのいい山本選手」という愛称(蔑称?)の方が読者間の認知度が高いでしょう。

今回は、「主役の迂闊な一言でなんかネタキャラになっちゃった感のある」山本選手について再評価していこうと思います。

以前にニコニコ大百科の「山本稔」記事の掲示板に書いた事の書き直しなんで、
ぶっちゃけ掲示板の>>46読んだ方が早いです。


山本選手が登場したのは「最大トーナメント編」。
シュート・レスリングの選手たる山本選手は、もちろんトーナメント参加者として登場します。
トーナメントが予定通りに展開すれば、一回戦でムエタイ選手のジャガッタ・シャーマンと対戦する予定でしたが、
範馬勇次郎の史上最強のゴリ押しによって、対戦相手が天内悠へと変更。
試合前には自身のセコンドに対し、「完成された格闘技を見せるだけのことだ」と余裕のある態度で、
控室でのやり取りから天内を打撃系と読む観察力も見せていましたが、
いざ試合が始まると、天内のノーモーションジャンプからの空中連続蹴りになす術なく、

善戦どころかまともな攻撃一つ出す事なく敗北してしまいます。
つまりバキシリーズに数多く居るかませキャラの一人でしか無いのですが、
彼が天内にフルボッコにされている最中、バキが驚きと共に発した、

「あのバランスのいい山本選手がッッ………」
という台詞でのなんとも微妙な山本選手の評価が、一部バキファンの間で話題になり、
山本選手は「バランスのいい山本選手」として、ネット上でちょっとしたネタキャラ扱いされることとなります。

しかし、この「バランスのいい山本選手」という発言、
よくよく考えていくとそんなに頓珍漢なものではないと私は思うのです。

まず、一つはっきりさせたいのですが、
この「バランスのいい」というのは、「体幹が優れている」とか「体重移動が上手い」というような、
所謂「身体のバランス感覚がいい」という評価ではないという事です。
もちろん最トーに参戦するほどの闘士なのですから、そのバランス感覚も当然常人以上に優れているとは思いますが、
同じ闘技者のバキから見てなお、
特別バランス感覚に重きをおいているという描写もないシュート・レスラーが、
「バランス感覚が優れている」という評価になるのは、ちょっとおかしな話です。
(まあ「ちょっとおかしな話」だと読者に解釈されたから、こうして迷台詞扱いされてる訳ですが…。)

私はこれは、「格闘スタイルのバランスの良さ」について評価したものだと思いました。
シュート・レスリングについては詳しくは知りませんが、
ウィキペディアと『オールラウンダー廻』(あちらは「修斗」なのでちょっと違いますが)で得た情報を見るに、
「パンチ・キック等の打撃有り」「投げ技有り」「組んでの攻防有り」「グラウンドの攻防有り」という、
総合的に多くの「格闘技」の要素が詰め込まれているスタイルです(だと思います)。
そのシュートレスリングを代表する山本選手は、
多くの格闘要素に通じたオールラウンダーと言えるのではないでしょうか。
つまりバキの評する「バランスの良さ」とは、
こういうキャラクターのパラメータグラフを作った時、

※『ハイキュー』18巻より。
ステータスがキレイに六角形になるバランスの良さではないでしょうか。
「個々の技術を数値化した際に、跳び抜けた点数は付かないが、(それなりに)高いレベルでバランスがとれている選手」というのが、
バキの山本選手評で、あの「バランスのいい山本選手」発言なのではないかと思うのです。

こういうオールラウンダーの選手の場合、
打撃相手なら打撃を凌ぎつつ組み技や投げを狙い、
逆に組み技系には打撃の間合いで立ち回るといった、相手ごとに違う戦略を立てられる強みがあります。
また、打撃も組み技もできるという事は、
相手の得意分野にもある程度付き合える訳ですから、
試合の主導権を握られても簡単には崩されない、防御面の強さにもつながります。
対戦相手からしてみれば、突くべき穴の無い、やりにくい選手と言えるでしょう。
実際、天内戦では、相手を打撃系と読んだ山本選手は「捕まえるまでが勝負か」と対打撃戦の戦略を組んでいますし、
全選手入場時の実況は、山本選手を「死角は無い」と称しています。
先の「完成された格闘技を見せるだけ」という本人の発言も、単に自惚れではなく、
「どんな相手でも対応できる」という自信の表れでもあるのでしょう。

そして、そんな山本選手だからこそ、
天内の「空中からの連続蹴り戦法」によって、一方的にやられた事に、
バキは「あのバランスのいい(≒なんにでも対応できる)山本選手がッッ………」と、
驚きを隠せなかったのではないかと思うのです。
「対応力の高さに定評がある選手が、“空中からの攻め”という、おおよそ格闘の常識から外れた攻撃で圧倒される」というのが、
この試合の内容であり、
天内の強さと、最トーのレベルの高さを読者に知らしめる一戦であったと思うのですが、
やられ役の山本選手の(更に言えばシュート・レスリングの)特徴がよく分からないので、
バキの「バランスのいい山本選手」発言が妙に浮いてしまっている感じですね。

ちなみにこの山本選手VS天内の一戦、
「天内悠、鮮烈空中殺法で衝撃完勝デビュー」的な印象が強いですが、
勇次郎の「考えたなヤロウ……」という発言や、
「最も何を欲していないか事前に察知し先手を打つ」という本人の格闘論を考えると、
天内もちゃんと山本選手の戦法等を考慮して、より勝利を確かな物にするために、
この空中連続蹴りという戦法を採ったものと思われます。
急遽決まった対戦カードとはいえ、お互いに戦略を練っての戦いをしているのです。
そう考えると、山本選手は純粋な格闘勝負のみならず、
「相手の特技を封じ、自分のペースに持ち込む」という戦略勝負でも(文字通り)上をいかれたと言えるかもしれません。
とはいえ、格闘技者に名の知れてるだろう山本選手と、
当初エントリーすらしておらず、格闘スタイルも不明の天内では、
お互い得られる対戦相手の情報に大きな差があるでしょうから、これを山本選手の失策と責めるのは酷でしょう。
(余談ですが、天内は、次の独歩戦で、
「空中戦ではなく、長い手足を使った関節技が自らの本命」というような事を言ってるので、
この一戦で「恐るべき空中戦の使い手」という印象を他の闘技者に与えたい、という計算もあったのかもしれません。)


とまあ、そんな感じで山本選手を擁護してきましたが…。
そもそも、この最大トーナメントにおいて、
・アンドリアス・リーガン(プロレス)―ボクシングの経験もアリ(ただし全力は出せなかったとの事)。
・マイク・クイン(プロレス)―ボクシングのゴールデングローブ(由緒ある大会)出場経験アリ。
・アレクサンダー・ガーレン(アマレス)―ジャックにも通用するボクシングテク持ち。
・猪狩完至(プロレス)―克巳ばりのローキック(加藤談)を放つ。
と、これだけ打撃系が出来るレスラーが揃っているので、
山本選手がいくら打撃・投げ・関節に精通したオールラウンダーといっても、
イマイチその強みははっきりしません。
いくらなんでも、みんなボクシング習い過ぎと思わざるを得ない状況です。
レスラーを除いても、柔道の畑中もある程度打撃をやっていましたし、
空手界のリーサルウェポンこと愚地克巳も花山戦で背負い投げで窮地を脱していますし、
自分の格闘スタイル以外の技も習得していて当然、という世界が地下闘技場なのです。
そもそも主人公のバキからして、
グラップラーとタイトルに入ってる癖に打撃も投げもありのトータル・ファイターですし…。
この辺、ボクシング一本でなんとかしようとした、アイアン・マイケルとかの方が異端なのでしょう。
そういう訳で、結局山本選手の評価は、
「表世界の格闘家としては一流だが、地下格闘場で勝ち抜くには不足」という所に落ち着いてしまう気がします。残念。

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2016-09-01 22:58 : 脇役再評価 : コメント : 1 : トラックバック : 0 :
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バランスがいい
バランスがいい記事だ。
2016-09-11 13:20 : バランスがいい山本 URL : 編集
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Author:ノノック
文章の苦手な文系。
ゆとり直前世代のゆるゲーマー。
ほのぼの漫画が好き。
2016年2月ブログ名変更。

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